キーマンと北埼玉を散策!あなたにとっての“ちょうどいい”まちを見つけよう–北部地域編–
はじめに
移住を検討していると、どうしても市町村単体に目がいきがちですが、実際に住むとなると移住先の市町村だけではなく周辺地域の環境や雰囲気もまた、暮らしに大きく関わってきます。
埼玉県では、移住希望者や地域と関わりたい人の新たなきっかけとなるよう、先輩移住者や地域のキーパーソンを集めたネットワークを構築し、メンバー同士の交流会を通して埼玉県で暮らす魅力を発信しています。
令和4年度は新しく北部地域のネットワークを構築し、交流会を行いました。
北部地域は、熊谷市、深谷市、本庄市、美里町、寄居町、上里町、神川町の7市町と広範囲に渡っています。
令和4年12月に開催された交流会に先駆け、令和4年9月に北部地域メンバーを集めたキックオフミーティングが開催されました。
メンバーを集めるため指揮をとった本庄デパートメントの榎本千賀耶さんは、平成31年に本庄市へ移住してきました。現在は、仲間とともに空き家を改修したカフェ兼コワーキングスペース「本庄デパートメント」を運営しながら本庄市を盛り上げています。
そんな榎本さんが、「今、埼玉県北部地域で注目の町」として話す寄居町で地域おこし協力隊として活動する大田幸子さんは、町の遊休不動産活用した、新たな拠点作りに取り組んでいます。
また、埼玉県北部地域の中心都市である熊谷市で活動しているウスキングベーグルの臼杵健さんは、もともと滋賀県出身で、子供のころ親の転勤で熊谷市に引越してきました。住んでいる町を盛り上げたいという思いで、熊谷市のラグビーを絡めたイベントや活動などを行っています。
同じく、熊谷市内でPLACE COFFEEを営む梅澤春樹さんは隣町の深谷市出身、臼杵さんと同じく、住んでるまちを盛り上げたいという思いからコーヒーに関わる仕事を始めたそうです。
最後に、群馬県との県境に位置する神川町で、実家の養蜂を手伝いながら新しいことを仕掛ける剣持さんは ”はちみつ”をテーマに活動しています。
活動の内容も三者三様ですが、メンバーに共通していたのは、”自分の住むまちを盛り上げたい“ということでした。
令和4年12月10日(土曜日)に開催された北部地域の交流会は、移住を検討していたり、北部地域でつながりを持ちたい方も交えた北部地域を広域で見つめられる内容として実施しました。
熊谷市・深谷市・本庄市(児玉)・寄居町・美里町の市町を1日かけて巡ることで、北部地域の魅力をアピールします。
当日各市町を紹介したキーマンは、先輩移住者、二拠点居住者など役職も立場も年代も様々な立場からまちを紹介しました。
当日の流れ
「まだまだ知られていない、埼玉の北のほうの楽しいこと巡りツアー」
【行程】
10:00 寄居町で空き家リノベーションの現場をめぐる
12:30 美里町にある「ぬまがみヴィレッジ」でおむすびランチ
https://www.instagram.com/numa_vil/
14:00 本庄児玉のビニールハウスを改装した植物雑貨のお店「solFlows」見学
https://www.instagram.com/solflows/
14:30 本庄児玉郡の「和菓子くろさわ」へ立ち寄り、人気の「酒まん」でおやつタイ
15:00 本庄のレトロ可愛い商店街を散策
本庄銀座ブルワリー&本庄デパートメント 訪問
https://www.instagram.com/honjo_ginza_brewery/
https://www.instagram.com/honjo.department
17:00 熊谷の「PLACE COFFE E」「FM KUMAGAYA」訪問
https://www.instagram.com/place_coffee/
17:40 毎月開催「星川夜市」を散策
https://www.instagram.com/hoshikawayoichi/?hl=ja
18:30 現地解散
ツアーのスタート地点は寄居駅!
寄居町は中心市街地活性化基本計画のもと、細く一方通行だった寄居駅前の道路を広げ、新しい駅前拠点の建設を予定しています。
一方で、旧武蔵野銀行の古い建物に商工会が移転予定など、町に点在する空き家のリノベーションもすすめられています。
まさに温故知新なまちづくりが進む寄居町を歩き、空き家や空き店舗利活用の現場を巡ることからツアーがスタートしました。
まずは、昭和60年に閉校した旧洋裁学校を見学。
30年ほど空き家になっていたところを、寄居町で地域おこし協力隊として活動している大田幸子さんが借り受け、整備をすすめています。
令和5年以降、校内はアートイベントや展示会、講習会を開催するための貸しスタジオとなる計画です。
あたたかな陽射しが降り注ぐ庭は、マルシェの開催なども検討しており、地域のみなさんが挑戦できる場作りを目指しています。
校内は昭和レトロなブラウン管テレビや床置き冷房機が置かれ、ノスタルジックな雰囲気がある一方で、まるでこれから人が集まることを期待しているかのように生き生きと見えました。
次に向かったのは元タバコ屋さんの物件。
今は都内と寄居町で2拠点生活をされている根岸さんの住まい兼デザイン事務所として活用されています。
古民家とはまた違った味わいを持つ昭和家屋とパースやモダンな調度品は相性バツグン。洗練された佇まいを感じました。
1階の一部を改装し、シェアキッチンとしての運用も考えているそうです。
現在はフランス人のご友人と一緒に試験的にバーイベントをすることもあるのだとか。
さらに中心市街地に広がる商店街の方に足を伸ばすと、ひときわおしゃれな店構えが目に入ります。
令和4年にオープンした泊まれるオーガニックレストラン「mujaqui( むじゃき) 」は築100年を超える「伊勢谷」という和菓子屋さんを改装したオーベルジュ( 宿泊施設付きレストラン)です 。
1Fはレストランと宿泊スペース、吹き抜けになっている2Fがラウンジと個室になっています。
寄居町出身のオーナーが地元を盛り上げたいとつくった宿です。
オーガニック野菜の栽培に力を入れている寄居町と、オーナーが仕事で関わっている全国にある離島の縁を生かして、寄居町と離島の食材が楽しめる場所となっています。
2、3年前にこの場所で解体ワークショップをしたことがきっかけで、大田さんは寄居町で地域おこし協力隊を志すことになったそう。
寄居町の人のつながりがうかがえます。
埼玉県北部には毎年冬になると ”赤城おろし” という乾いた北風が強く吹きつけます。
この日は12月というのにほぼ風はなく、過ごしやすい散策日和でした。
里山を眺めていると、季節の移ろいにも目を向けられる心の余裕が生まれてきます。
美里町の「ぬまがみビレッジ」でおむすびランチ
寄居町を満喫した後、一行はバスに乗って、美里町にあるぬまがみビレッジへ。
寄居駅周辺を離れると、一帯は畑や田んぼが多くなり、農ある暮らしの豊かさを感じる景色が広がります。
美里町はブルーベリーの栽培が盛んで、少し寒そうに冬を待つブルーベリーの木々を散見できるのも特徴的です。
梅仕事、農体験、自然の中でていねいに暮らすワークショップを提供している「ぬまがみビレッジ」も今年オープンしたばかり。
年齢も障がいも関係なく、人と人、動物が繋がる場所づくりを目指しています。
「おむすびをきっかけに、気軽に集まってほしい」と話すオーナーの齋藤さん。
お庭は、家と田畑が区切られておらず、自然も人も動物もシームレスに暮らすという世界観が伝わってきました。
おむすびや味噌汁は、口にいれた瞬間、素材本来のおいしさが溢れ、思わず笑みがこぼれてしまいます。
ありのままでおいしいものを食べると、人とのコミュニケーションもなんとなく無理をせずに丁寧になっていくような気がします。
本庄市・児玉地域にある“植物と暮らす”を感じる「solFlows」へ
お昼を食べた後は、バスで本庄市・児玉地域になる「solFlows」へ移動します。
「solFlows」はカフェスペース併設のアクセサリーや生活雑貨も取り扱うお花屋さんです。
15年ほど使われていなかったトマト栽培用のハウスをオーナーである大澤さんご夫婦でリノベーションし、平成30年にオープンしました。
改装前、床はすべて泥や土で汚れ、屋根もボロボロだったところを、砂利を敷き水道設備を整え、お手洗いやシェアキッチン設備を整えたそう。
今となってはかつて農業用のビニールハウスだったとは思えないほど、おしゃれで落ち着く場所になりました。
この日は「Men day Cafe」と称したイベントの開催日で、本庄市の絶品コーヒー屋さんの出張販売やオリジナルデニムのお店、シルクスクリーンプリントのTシャツ販売など、男性出店者さんが活躍されていました。
まさに、花・植物とともにライフスタイルを豊かにするというコンセプト通り、人が憩い深呼吸したくなる場所でした。
次なる目的地本庄市街地へと移動する道中、老舗の「和菓子くろさわ」さんへ寄り道。
店主が他ではまねできないと断言する「本造り酒まん」はどぶろくで膨らませた完全無添加のおまんじゅう。
ふわふわで柔らかな食感とザラメを使った程よい甘さは、和菓子独特のもったりとした重さがなくあっという間にペロリと食べ終えてしまいました。
その美味しさは遠方からわざわざ買いに来る方もいるほどです。
心地よい甘さと午後の陽気に包まれながら、バスに揺られること約15分。
本庄市の商店街「銀座通り」へ到着しました。このあたりは旧中山道最大の宿場町「本庄宿」と言われ栄えた地域です。
大きな天災や戦災の被害を受けることなく、大規模な再開発による影響も少なかったため、古い蔵や建物が今なお残り現代に活用されています。
また軽自動車も入れないような狭い路地がいたるところにあり、散策していると「この道はどこに続いているのだろう」と冒険家のような気分にもなります。
ツアー後半では里山風景が楽しめる児玉郡、古き良きまちなみと新しい建物の整備がすすむ、新旧両側面を持ち合わせる本庄市をめぐります。
「人と人をつなぐ力があるビール」を切り口に本庄市で100年続く事業を作る
まずは令和4年にオープンしたばかりの「本庄銀座ブルワリー」へ。
「本庄市がセカンドタウンになるようなクラフトビール醸造所を本庄市に作りたい」という思いで、本庄市の麹を使ったビールを作っています。
また、水をアレンジするブルワリーが多い中、何も加えず本庄市の水をそのまま使っていることも特徴です。
テイクアウトができるほか、10席ほどのタップルーム( 飲食スペース) で、本庄銀座通りの味を楽しめるよう持ち込みもできます。
オーナーがビールに興味をもったきっかけは、オーストラリア留学時、ビールが国や言語を超えて人とつながれるきっかけになることを実感したからだそう。
令和4年11月には本庄地域をもっと楽しめる企画として「本庄デパートメント」さんと「ビアフェスタ」も開催しました。
これからますます垣根を超えたつながりが生まれていくと思うとわくわくします。
ツアーもいよいよ終盤。打ち上げも兼ねてテイクアウトでビールを買い込み「本庄デパートメント」へ。
「働く、暮らす、つくる、学ぶ、遊び倒す。」ニューノーマルを生み出す「本庄デパートメント」
「本庄デパートメント」は「このまちを誰よりも遊び倒す」という会社理念のもと、移住者である早川さんと榎本さんが立ち上げたコミュニティスペースです。
築100年の元料亭をリノベーションした空間はコーヒーとクリームソーダが秀逸のカフェ、コワーキングスペース、高校生の作業スペースなど、集う人によって変幻自在に変わります。
本庄デパートメントに興味をもってくれた方々と一緒にDIYワークショップをしたり、活用方法を一緒に考えたりと、半年ほどかけて敢えてゆっくりとリノベーションをすすめていったそう。
地元の飲食店の方をはじめ会社員デザイナーの方、さらには本庄市役所の職員の方まで「本庄で楽しいことをやりたい!」というスローガンのもと、関わってくれている方は20名ほど。
本庄デパートメントが主催する定期マーケットのマップには商店街のおすすめが細かく書かれており、マーケットをきっかけに商店街で遊んでほしいという願いがこめられています。
そんなお2人の姿を見て、銀座通りでお店をはじめたいという若者も増えてきているそうです。
2軒お隣には、来春に新しく古着屋がオープン。本庄市を動かすムーブメントがすでに起きはじめています!
榎本さんが話している最中、なんと榎本さんの大学時代のご友人がふらっと立ち寄って数年ぶりの再会をするという一面も。
その場でツアー参加者と仲良くなり、感動の再会をみんなで祝福することになりました。
はじめまして同士でも、なんとなくその場で仲良くなれてしまう。本庄デパートメントにはお2人の魔法がかかっている気がしました。
まちとの相性を知れるのはツアーの醍醐味
ツアー中、埼玉への移住を検討している参加者の男性と「住みたいまちは相性が大事」という話になりました。
インターネットにも情報は溢れていますが、まちも人と同じで相性がいいかどうかは会ってみないとわからない。
特に、移住においては言語情報だけでなく、自然と都会のバランス、なんとなく好きな場所、まちや人の雰囲気などの非言語情報も大切になってきます。
今回キーマンのみなさんと一緒に広域でまちをめぐったことにより、自分だけの「ちょうどいい」を見つける機会になったはず。
また、今年から寄居町に移住している女性は、移住への後押しとして何気なく出会った地元の方の存在も大きいと話します。
その女性は寄居町への移住を検討し町内で会社の面接を受けた後、淀河原で休んでいたところ、地元の方に話しかけられたのだそう。
偶然、女性と同郷から移住したその方が寄居町の魅力を自然と話す姿に感銘を受けたのだとか。
「そのまちを好きで人に語りたくなるのって、まちが素晴らしい証拠ですよね。」と話してくれました。
そのような偶発的な出会いを生めるのもツアーの醍醐味です。
多様な人が暮らしを営む熊谷市へ
まる1日盛りだくさんであった「北埼玉の暮らしを広域で見つめられるツアー」は本庄市で一旦解散となりました。
この日がちょうど熊谷市で月に1度開催される「星川夜市」だったこともあり、都合がつくメンバーで熊谷に移動します。
熊谷市の人口は約19万人。この日巡った寄居町が約3.2万人、美里町が約2.3万人、本庄市が約7.7万人のため埼玉県北部の中で最も人口が多い市です。
多様な方々がつながる場所として、駅前デパートには大人から子供まで自由に使えるコミュニティスペース「PLACE COFFE E 」やコミュニティFMである「FM クマガヤ」があり、熊谷周辺地域のモノやコト、ローカル情報を発信する拠点となっています。
アットホームがキーワードの「星川夜市」
星川夜市は平成30年から毎月第2土曜日に星川通りの片側を歩行者天国にして開催しています。
会場が大いに盛り上がる中、「星川夜市」実行委員長の木村さんにお話を伺いました。
「星川夜市」の原点は、隣町で数十年前に開催されていた「鎌倉町ナイトバザール」です。
星川周辺の商店街で何ができるか考えていた際、近所の方々からアイディアをもらって実現にいたったそうです。
星川通りには、飲食店やクラフト品など約50店舗ほど並び、来場者は平均で2,000〜2,500人ほど。
この規模にも関わらず、会場はなんとボランティアスタッフ8名で運営されているというから驚きです。
星川夜市に滞留せず、まわりの飲食店へも回遊してほしいという運営側の想いから、会場内には敢えて飲食スペースを設けないという工夫が行われています。
実際、通り沿いにある飲食店が軒先から出店しているケースも見受けられました。
会場内には来場者同士や出店者と来場者の再会を喜ぶ声も響き、人の輪の広がりを感じました。
理想の暮らしを見つける第一歩はとりあえず行ってみること
ツアーの中で最も印象的だったのは、キーマンたちの主語が「自分」ではなく、「まち」であること。
オープンして間もない場所も多く、コロナなどの外的要因の厳しさもある中、埼玉県北部のまちを想い、持続的で未来を考えた企画をし、そしてそれをみなさん自身がとことん楽しんでいる姿に惹き込まれてしまいました。
今回ご紹介した場所はどこも暮らしの延長上にあり、肩肘はらず気軽に足を運べます。
少しでも気になった方はぜひふらっと遊びに行ってみてください。
きっとあなたにとって移住のきっかけとなる「ちょうどいい」が見つかるはずです。