焚き火とBBQを囲んで埼玉の暮らしを考える交流会–自然・アウトドア編–

saitama story|埼玉県の移住者交流会レポート

次々に集まる現地ゲストと参加者が一緒になって設営準備をしていきます

はじめに

コロナ禍で密を避けるといった行動様式が火付け役となりはじまった、第2次キャンプブーム。

自粛ムードが落ち着いた今なお、アウトドアを楽しむ人は多く、新たなカルチャーとして浸透しつつあります。

埼玉県にも、身近な自然や地域資源を生かしてアウトドアの体験やイベント企画を作り出している方々がいます。

秋晴れのアウトドア日和のなか、当日集まった総勢20名で集合写真

11月3日、秋晴れのなか埼玉県ときがわ町「noniwa」に、アウトドアの観点から埼玉県を盛り上げるキーパーソンと埼玉に移住を考えている方々が集まりました。

キャンプ民泊「NONIWA」から見える長閑な景色

ときがわ町は埼玉県の中央部に位置し、なだらかな山々に囲まれた里山エリア。noniwaに向かう道中、町に入ると周辺の景色がスッと変化した印象を覚えました。古きを重んじるようなノスタルジックな雰囲気がどことなく漂い、コンビニが少なく、代わって野菜の無人販売所や個人で営むカフェや商店が多くなります。家々の軒先にたわわに実った柿の木がまちの豊かさを象徴しているようでした。

会場づくりからみんなで楽しみました

火おこし、バーベキュー、ほうじ茶作り体験など、誰でも楽しめるアウトドアコンテンツを通して、アウトドアと自然豊かな埼玉県で暮らすことへの理解を深めます。

埼玉県とアウトドアの魅力を教えてくれたのはこちらの方々です。

埼玉移住サポーターの紹介

野あそび夫婦 青木達也さん・江梨子さん|大人も子供も夢中!キャンプの登竜門「火おこし」体験

キャンプ民泊「noniwa」のオーナー

キャンプ×◯◯をテーマに、町のアウトドアコンテンツを生み出すご夫婦

飯能ジビエール 遠藤拓耶さん|埼玉をかじる!ボリューム満点BBQ

会社員として週5日で働きながら、週末ジビエ事業をはじめたスーパー移住者。

狭山茶農家「的場園」 的場龍太郎さん|初めてでも簡単!ほうじ茶焙煎体験

お茶農家の4代目であり、お茶の可能性と楽しさを引き出し続ける狭山茶王子

FARM WEDDING代表 水川瞳さん|狭山茶と紅心5寸のにんじんを使ったスイーツ

モデルの経験を生かしながら「食」と「農」をテーマに活動中の素敵女子

大人も子供も夢中!キャンプの登竜門、火おこし体験

火おこし体験のレクチャーを受ける子どもたちの眼差しは真剣です

簡単な自己紹介のあと、野遊び夫婦による火おこし教室がスタート。

野遊び夫婦は、「noniwa」でキャンプ初心者向けに道具の使い方からメンテナンス方法まで一つ一つ丁寧にレクチャーする講習会を行っています。

今回は、木片、麻の紐、ファイヤースターターを使った本格的な火起こしを教えていただきました。

挑戦したのは、4人の子どもたちとそのお父さん。

火おこし体験では、こんな材料を使っていきます

まずは、ナイフの使い方を学び、30cmほどの木板を「焚付け」にするため、割り箸ほどの大きさに加工していきます。

最初は野あそび夫婦の達也さんがお手本を見せていきます

「まず、ナイフの手を伸ばした周辺に誰もいないか確認してください。刃を当てて、別の木片でトントンと叩いて木を割っていきます。勢い余ってナイフが身体にあたってしまうことも考え、急所となる太ももあたりに刺さらないよう、刃は外側に向けるように力を加えましょう。作業が終わったらナイフは鞘にしまうこと。誰かが踏んだりしたら危ないので。(達也さん)」

お父さんと子どもで協力しながら進めていきます

たまたまいた虫さえも体験のネタ。「キクイムシ」は木を食べる虫で住宅にとっての害虫なんだそう。

普段見かけない虫を子どもたちも興味深そうに見つめていました。

薪を組み方ひとつで火の着きやすさも変わるそう

薪割りが済んだら、麻の紐をナイフで割いて手作りの着火剤を作ります。

こぶし1つ分ほどの毛玉ができたら、いよいよ着火。

麻の毛玉を置き、その上から空気が通りやすいように加工した「焚き付け」の木を組んでいきます。

燃えやすいよう、「noniwa」に生えている杉の葉も投入。その場にある素材を活かすのもアウトドアの醍醐味です。

火が点いた瞬間、一同から歓声があがります

マグネシウムの棒を削り、粉を削って着火剤にまぶします。

落とした粉にマグネシウム棒を削って散った火花をあてることで着火します。燃えたらすぐに火種をトングで薪に移します。

子どももお父さんも火おこしに夢中になります

慣れない作業に苦戦する子供たち。ここはお父さんの腕の見せどころ。

薪割りや着火を器用にこなすお父さんたちを子供たちも頼もしく感じているようでした。大人も子供も夢中になって、見事全員着火に成功。

なかなか火がつかないと苦戦しながら試行錯誤していきます

しかし、火をつけるだけでなく、燃やしきるまでが火起こし体験。木材を燃やすことでできる炭は微生物が分解できず、土にかえりません。燃え残りの炭を土に埋めるのは、ゴミを土に埋めているのと一緒。環境にも配慮してキャンプを楽しめるよう、炭に息を吹きかけることで白い灰にする方法も学びます。

子どもたちからもたくさんの質問が飛び交いました

火起こしを体験した参加者同士はまるで戦友。イベント開始時の緊張した空気はいつのまにか消えていました。

埼玉をかじる!ボリューム満点BBQ

出番を待ってましたと、BBQについて語り始めた遠藤さん

ひと仕事終えたあとはお待ちかねのBBQタイム。埼玉にかじりつくようなメニューはこちら。

最初の前菜から豪華メニューです

・彩のカナッペ

・生ハムとクリームチーズの茶ノベーゼ

・加藤牧場のフロマージュと飯能産ハチミツ

・合鴨のスモーク 越生産梅肉ソース添え

・フレッシュモッツァレラのカプレーゼ

・ハーブリングイッサ 埼玉野菜のモーリョソース

・狭山産ピーマン&甘長とうがらしのまるごと焼き

・飯能産なすのトロステーキ

・大河原さんのしいたけアヒージョ

・西川材プランクサーモン ゆずの香り

・コエドビールdeビア缶チキン

・柚子香るワンポンドステーキ

遠藤さんのオリジナルソースが一層食欲をそそります

「彩のカナッペ」と名付けられた前菜からはじまり、次から次へと彩り豊かなお料理を提供してくれる遠藤さんはさながら手品師。

野菜や肉をおいしく仕上げるコツを説明しながら、目の前で調理してくれるので料理ショーを見ているようでした。

参加者さんの目の前で肉を焼きながら一つ一つ説明していただきました

「お肉を柔らかくするには、まずお肉をたたくこと。

100円均一でも売ってるような肉叩きを使って、お肉の厚みが半分から3分の2くらいになるように繊維を壊していきます。

また日本だと塩麹、海外だとパイナップルジュースに漬け込むのが一般的です。

舞茸もおすすめ。舞茸の分解酵素は最強でお肉と舞茸を一緒に調理するとお肉はとても柔らかくなります!(遠藤さん)」

色とりどりのソースとお肉に野菜、素材を楽しむBBQメニューが並びました

それぞれが持つ旨味を最大限に活かすためシンプルな味付けでありながら「お好みで」と添えられたソースがまた絶品。

的場農園さんのお茶を使った塩、越生産の梅ジャムを使ったソースなど埼玉県産のものをはじめ、

南米料理に使われる「ハラペーニョのレリッシュ」や「モーリョソース」など初めて聞くソース名も。

埼玉県と海外のフュージョンを楽しめるのも料理の良さですよね。

的場さん直々にお茶を振る舞ってくださいました

乾杯は的場さんにご用意いただいた水出しの狭山茶で。

水だし緑茶はカテキンの渋みや苦味が出にくく、アミノ酸の甘みと旨みが引き立つダシを飲むかのようなたしなみ方だそうです。

注いだときから漂うフレッシュな緑茶の香りが気分をスッキリさせてくれます。ごちそうを待つ身体に喝が入った気がしました。

的場さんのお茶を淹れる動作、ひとつひとつの所作がかっこいいです

「『売茶翁(ばいさおう)』という京都を拠点に煎茶を普及させた仙人のようなおじいちゃんがいて、

その方はお茶は外で飲むのが一番と言っていたそうなんです。僕もアウトドアでお茶を飲むのはいいなと思っています。(的場さん)」

ご飯を囲みながら会話を弾みます

今日が初対面という遠藤さんと的場さん。信じられないくらい息ぴったりに「食✕アウトドア」の体験を満喫させてくれました。

料理やお茶の感想を共有することで参加者同士の会話も自然と弾んでいきます。

初めてでも簡単!ほうじ茶焙煎体験と埼玉スイーツ

こちらがほうじ茶を煎るための道具

食事がひと段落したころほうじ茶体験がはじまりました。

「用意するのは古くなってしまった緑茶の葉とガスコンロ、フライパン、そして、どこのご家庭にも1本はある『お茶の木』。

万が一『お茶の木』がない場合は菜箸や木べらでも大丈夫です。(的場さん)」

お客さんの表情を見ながら、テンポよく笑いを取る的場さんはまるで芸人さんのよう。

手を動かしながら、軽快なトークでお茶を語る的場さん

お茶をいれているときの真剣な表情とコミカルな説明とのギャップに一瞬で惹かれてしまいます。さすがは狭山茶王子……。

子どもにとっても、お茶を煎る体験は初めてだったようで真剣です

あたためたフライパンに大さじ山盛り1杯の茶葉をいれて炒っていく。次第に茶葉の甘く香ばしい香りがあたり一帯に立ち込めてきます。

あたりはお茶のいい香りに包まれていきます

お茶を焙煎すると想像以上に煙がたつので、屋内でやる場合は換気扇をまわしても、部屋の中が煙くさくなってしまうそうです。

後のことを考えず思いっきり楽しめるのもアウトドアのいいところ。

お茶の色が変わってくると同時に、甘い緑茶の香りから芳醇なほうじ茶の香りに変化していきます。

水川さんがこの日のために用意してくださったケーキ

出来たてのほうじ茶と合わせるのは、水川さんによる狭山茶のシフォンケーキとにんじんケーキ。

狭山茶はスイーツにすると、緑茶本来のフレッシュな香りが生かされ、甘いものが苦手な人でもいくらでも食べられる自然な甘さでした。

ときがわ町のあたたかさに惹かれて

参加者の中に、まさにときがわに移住を検討しているご夫婦がいらっしゃいました。

サカイさんご夫婦は、もう何十回とときがわ町に足を運んでいるそう。

このあと空き家見学に向かうと話されていたサカイさんご夫婦

「『いつかは移住したいな』と5年ほど前から旅先でも地域の住環境に興味を持っていました。

東京にオフィスがあるので出社の可能性を考えると、四国や九州など地方に行き過ぎるのは難しいので、

軽井沢でワーケーションをしたり、西伊豆の方が気になって見に行ったりしていました。

noniwaさんを知ったきっかけはお気に入りのyoutuberが動画で紹介していたことです。キャンプ講習を受けに初めて行った時、

ときがわ町の雰囲気がいいなと。その後民泊をして、ときがわ町の方々とのつながりも少しずつ生まれていきました。

ちょうど二人とも在宅ワークができるようになったこともあり、移住に踏み切ろうとしています。(サカイさんご夫婦)」

食後はゲストそれぞれの話を聞きながら、まったり交流タイム

移住したいという気持ちがあっても、仕事やライフイベントによってタイミングは人それぞれ。

今回のイベントのようなゆるいつながりを継続的につくり続けることで、いざタイミングが来た時に踏み込める、

背中を押してくれるきっかけになりうると強く感じました。

眺めているだけでも癒されるときがわ町の風景

「田んぼや畑といった田園風景はどこでも見られますが、人との出会いはその地域でしかないもの。

移住を決められたのはときがわの人のあたたかさに触れたのが大きいですね。(サカイさんご夫婦)」

埼玉を味わい尽くして

イベント終盤は移住や働き方の話題も上がっていきます

イベント開始から3時間経ち、和やかな雰囲気の中、様々な会話が飛び交いました。

実際移住した方のお話を聞くと、地域への理解が深まるのと同時に、埼玉県へ新たな興味が沸いてきます。

東京都に隣接している埼玉県ですが、県内には豊かな自然が残っています。

自然が身近にある場所で生活したい方、アウトドアに興味がある方、ぜひ埼玉県に足を運んでみてください。

思い描いていたイメージに、埼玉県はぴったりかもしれません。

(文:櫻井智里 写真:吉田櫻子)